「覇王の番人」真保 裕一著

• 2009年5月21日

 

 今日は、個人的にオススメの本をご紹介してみます。E&Gアカデミーの事とは、殆ど関連がありませんが、お許ください・・・

 歴史モノ大好きな私としては、「歴史・時代小説こそ、最新モノを読むべし!」と声を大にして叫びたいのです。歴史分野の研究は、研究者の弛まぬ努力により、日々、進展しているので、いわゆる「有名作品」よりも、新たな事実(史実)を踏まえていることが多いのです。例えば、織田・徳川連合軍VS武田騎馬隊が激突した「長篠の戦い」は、信長の「鉄砲衆の三段構え」の策がなければ、話としては盛り上がりません。現在、殆どの歴史家が、この「策」を否定しているため、題材にできないとなると合戦譚としては、かなり退屈になってしまうと思います。とはいえ、あくまでも「小説」なので、「史実+フィクション」のバランスが取れていれば、OKなのですが・・・

さて、前置きが長くなりました。最近の歴史小説では抜群に面白いのが、真保裕一「覇王の番人」です。『明智光秀=本能寺の変』をテーマに、エンターテイメント小説の旗手である真保さんが、この歴史上でも指折りの「謎」を見事に解決してしまいました。もう、本能寺に関しては、「これが史実でいいんじゃない」と思ってしまうくらい無理がありません。明智光秀が謀反を起こした理由については、一昔前は、「信長に虐げられて逆ギレした」という「自暴自棄」説が主流でしたが、ここ数年、首謀者の特定は難しいながら、黒幕に動かされたという「黒幕説」や「陰謀説」が言われてきました。しかし、ここで描かれる光秀の姿は、人に動かされるのではなく、「自らの信念を貫く武士(もののふ)」そのもの。信長のイジメの本質を見抜き、「主君を倒して天下を目指す」という勝ち目の見えない勝負に挑む姿は、真保さんの初期傑作「ホワイトアウト」の主人公「富樫(映画では、織田雄二が演じていました)」と、完璧に重なってしまいました。複線として語られる「忍び衆」との物語も、フィクションとは思えないリアルさで、そちらだけでも「忍者モノ」として、充分に行けそうです。
 真保さんとしては、これから本格的な歴史小説に行くのでしょうか?次回作は、石田三成か真田幸村で期待しています。無理ですかね。